2014年6月8日日曜日

美育文化ポケット

あたらしい図工・美術の雑誌が届きました。以前わたしたちも実践等を紹介させていただいた「美育文化」が就学前の子どもにもフォーカスを当ててリニューアルしています。
私は現在特別支援学校の高等部で美術を教えていますが、図工以前、美術以前の体験というのはその後の子どもたちにとってすごく大切だと日々感じています。といってもなかなかそのような充実した体験を行う事は簡単ではないのかなとも感じます。
この雑誌は、どのように子どもを育てていくのかを「こうやりましょう」のような右向け右ではなく「こういう考え方があるよ」とあくまで一例として伝えてくれるようです。そして柔らかい。
うちの子どもたちが通っている保育園にもプレゼントしたいと思います(こういうことをすると押しつけがましく思われるかな)。
戸ヶ瀬

2012年9月8日土曜日

美術っていいとも!12



小橋川です。久々のアップだよ。コラムリレー「美術っていいとも」12。

あれ?、「美術っていいとも」ってまだやってたの。やってたんですよ。まだまだ、続きますよ。不定期で。では、吉本健二先生からの投稿です。


身近な美術作品を鑑賞した話                     吉本健二

私の大好きな映画のひとつに「ペイ・フォーワード」というのがあります。社会科の
先生(ケビン・スペイシー)が、初めての授業で、「もうすぐ卒業し、君たちは、自
由になる」。生徒たち、机を叩いてエィーと気勢を上げる。「けれど、君たちの世界
がシット(クソ社会)ならどうする」。黒板の板書『世界を変える方法を考えて、そ
れを実行せよ』との課題を生徒たちに出します。生徒たちは、「無理。不可能」と口々
に言いますが、主人公のトレバー少年は「ひとりが、3名の人を助けすれば、ネズミ
算式に世の中が良くなっていく」と考え、実行します。ひとり目、ホームレスの男を
お家に泊めます。翌朝、トレバーのお母さんは、ホームレスの男にビックリします・・
・。
私たちは、普段ものを見たら「見える」と思っています。しかし、ものごとに興味や
関心をもたなければ、気づかないし、見えないことが多々あります。ルビンの壺がい
い例ですね。ルビンの壺を初めてみせられたときには、向かい合う横顔に気がつかな
かったはずです。もうルビンの壺という言葉を手にいれた((知識を頭に入れた)か
らわかるのですね。
頭の働きには、生きる力(植物脳)、たくましく生きる力(動物脳)よく生きる力(
社会適応脳)より良く生きる力(創造脳)があります。創造的な活動のヒントはどこ
にあるか。身近なところにもありました。退職の年にものごとに「気づくこと」の大
切さを確認し、創造的な活動につなげるために、次の鑑賞問題を授業で行いました。
鑑賞課題 那覇高校の壁画をよく観察して、自分の頭で考えてください。
1「看護科の壁画」の問題・・・(ものごとをよく見て(観察)して気づき、鑑賞し
て論理的に述べる)
Q1 那覇高校には、看護科がありました。廃科を記念して「看護科の壁画」が飾ら
れています。
それは、校内のどこでしょう。( 1.本館   2.体育館  3.美術室 )
  Q2 その壁画の種類を選びなさい。(1.モザイク 2.油絵 3.貼り絵 )
  Q3 パンドラの箱を開けた後、最後に残ったのは「希望」でしたが、看護科記
念壁画のタイトルは、「○○へ」です。
Q4 壁画デザインの原画は、看護科の生徒が描いたと思えます。実際の壁画施行は、
(1.業者 2.生徒)どちらですか。その根拠を、5つ考えてみましょう。
ヒント(*目地を見る *タイルの質 *天使 *看護士の顔 *ガラスタイルの大
きさなど)
*タイルとタイルの間の線を目地という。タイルの部分(パーツ)部分を結びつけ、
または色で効果良く鮮明にしたり、統一感をもたらしたりする。タイルを接着するモ
ルタルをモルタル目地という。
  Q5 壁画の目地は、(1.白  2.黒)どちらでしょうか。
以上は、那覇高校の校内に入り観察しないと解けない問題ですが、実は、誰もが通る
場所にその「看護科の壁画」はあるのです。「目地は、白か黒か」と問われると注意
してみていなかったので自信を持って答えらません。よく観察しないと、「生徒が仕
上げたか、業者が仕上げたか」も答えられません。「意識」して鑑賞するとものごと
がよく見えてきますね。無意識から意識へ。意識して思考へ。
卒業壁画は、伝統的に生徒会中心に自主的に制作します。生徒の卒業壁画委員会に、
現場でミニ講座を行いました。「目地の効果、明るさを演出する白の効果、ちぎった
紙を、ベタで貼りつけるのではなく、隙間を開ける大切さ」などを伝えました。壁画
委員は、素直に聞き、よく鑑賞し学びました。労をいとわず見本を作り、各HRに伝
えました。卒業式にお披露目の幕が開き、壁画が姿を見せると会場は「おーっ」との
例年以上のどよめきの声が上がりました。
世界を変える方法を考えて、それを実行しているのが美術(アート)ともいえるかも
しれません。
「何を経験したかではなく、何を学んだかが大切である」ノーマン・カズンズ

2012年7月8日日曜日

美育文化7月号

久しぶりのアップです。
美育文化7月号に執筆しました。
今月号のテーマは「図工考現学」。


編集長のアナザワさんの意思がぎゅっと詰まってます。
攻めた特集だとおもいます。


そして我々の原稿も含め、テーマで攻めた分だけ破綻気味。
でも大丈夫。大学の先生もえらそうーな原稿でこけていて笑える、というか苦笑い。


私たちは大学の先生と美術館学芸員へのインタビューも交えた、やっぱり今回も対談形式。



2012年4月30日月曜日

美術っていいとも11


 恩師である「那覇造形美術学院」の黄金先生から紹介されました平安名久美子といいます。
那覇高校出身で九州産業大学(油画専攻)卒業後、臨時的任用教員として真和志高校、南部農林高校、島尻特別支援学校、泊高校、首里高校の勤務を経て平成21年度本採用として首里高校染織デザイン科に赴任し日々の教育活動にあたっています。
教員採用試験を受け続けて8年。ようやく念願の美術教師になることができました。
それも、これまで関わってくださった恩師や諸先輩方のお陰です。
 教師になることが中学校の時からの夢でしたが、美術の魅力や美術に対する考え方は、年々深化し続け、美術教師であることに誇りを感じています。
 前回の黄金先生と同様、私も予備校で教わった事が今の自分の美術に対する考え方の根本を築いています。また、高校美術研究会や勉強会でたくさんの『美術』に対する考え方に触れ、吸収しているところです。
 本採用になり、今までの経験や自分の専門性を生かし多くの生徒に美術の楽しさを伝えよう!と、ワクワクしていました。
ところが・・・私の採用校は、沖縄の伝統工芸を教える染織デザイン科だったのです。
私は「デザイン担当」ということでしたが、伝統工芸の知識も経験もない私が、教えることができるのか本当に不安でした。
とにかくひたすらに教材研究をし、自転車操業のような日々を過ごしました。しかし、そんな日々をとおして沖縄の伝統工芸を守り抜いた方々の熱い思いに触れ、沖縄の伝統工芸の素晴らしさや価値に気付き、沖縄を誇らしく感じることができたのです。
沖縄県の美術教員であるにも関わらず、恥ずかしながら沖縄の伝統工芸について初めて知ることだらけでした。
今、私の使命は私の感じた沖縄の素晴らしさを生徒たちに伝えることだと感じています。もちろん美術教師ですから、伝統工芸ばかりではなく、「美術をとおして教育する」ことも使命の1つです。
何かの必然により導かれた染織デザイン科と、目の前にいる生徒に対して、沖縄の美術教師としてできることを模索しながら、スキルアップしていきたいと強く思います。
そのためには、仲間が必要だと感じています。
そこで、お願いです(笑)
高校美術研究会へも多くの先生方に参加して頂き、沖縄の高校美術を一緒に盛り上げて頂きたいのです。
定例会やその他行事については、各高校に公文にて連絡しています。新年度第1回定例会は5月を予定しています。本当に楽しい会です。どうぞお気軽にご参加ください。
お待ちしています。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

次は、昨年定年退職されましたが高校美術研究会でたいへんお世話になっています那覇高校の吉本健二先生にバトンタッチします。
吉本先生、よろしくお願いします。

いろんな場所で生まれる美術 報告集完成です!


みなさまこんにちは、小橋川啓・戸ヶ瀬哲平です。
今年1月に行った「いろんな場所で生まれる美術」というイベントの報告集が出来ました。
展示、ワークショップ、授業、講演、シンポジウムがぎゅっと詰め込んだ三日間を、ぎゅぎゅぎゅっと91ページに詰め込みました。
興味のある方、送りますのでお名前、住所をこのアドレスogidou.kaiduka@gmail.comにメールして下さい。(以前に行ったものも必要であれば送ります。)

内容
展示:大平特別支援学校、さんご保育園、沖縄カトリック小学校、琉球大学附属小学校、琉球大学附属中学校、長嶺中学校、熊本市立北部中学校、糸満高等学校、普天間高等学校、琉球大学教育学部、珊瑚舍スコーレ
ワークショップ:「飛龍波濤文袋中凧」スタジオ解放区、「段ボール椅子づくり」小橋川啓・戸ヶ瀬哲平
授業:仲井真小学校4年生×仲嶺盛之(筑波大学附属小学校)
講演:「美術、頭の中を見る力」齋正弘(宮城県美術館)
シンポジウム:齋正弘(宮城県美術館)×小田切忠人(琉球大学教育学部数学教育)×仲嶺香代(沖縄県立総合教育センター)×玉城真(珊瑚舍スコーレ)
寄稿文:スタジオ解放区、仲嶺盛之、玉城真、仲嶺香代、小田切忠人、齋正弘、ギマトモタツ、宜保朝子、町田恵

2012年1月31日火曜日

美術っていいとも!10

真和志高校の小禄先生から紹介されました黄金忠博(きがねただひろ)といいます。北海道出身で、沖縄県立芸術大学
絵画専攻油画コースを卒業後、現在の職場の前身にあたる芸大・美大受験予備校「那覇美術学院」に入社、2001年に「那覇造形美術学院」を開校し、経営と実技指導にあたっています。自分は教員免許は取得しましたが実務経験は無く、学校での美術教育というものがどういうものなのかはっきりいって分かりません。ただ芸大・美大受験の入試は専門性が高く、学校教育の中での『美術』で教わる技術力を逸脱しているように思います。ですから自分たちのような、専門で指導する場が必要だと感じています。

 芸大・美大受験予備校で教わる『美術』は、ある意味特殊だと思います。入試では、出された問題に対して、ある一定時間内に作品を制作しなければなりません。デッサンであったり、油絵だったり彫刻だったりと、その専攻の専門技術で制作する。そしてそれを教授陣が評価し合否が決まる。ですからこちらとしては『受かるための作品』の作り方を教えます。時間内に効率よく完成度を高める為の技術や仕事運びを指導します。本来それを美術教育といって良いかどうか疑問です。『受かるための作品』を制作できるよう、毎日毎日同じ石膏像や静物モチーフ等を繰り返し、その描き方を体で覚えて行くただの訓練のようなものだからです。
 しかし、この期間で経験する事は非常に重要だと思っています。

 自分自身、予備校で教わった事が今の自分の美術に対する考え方の根本を築いているといって過言ではないでしょう。予備校で出会った『美術』という考え方に、大きな衝撃があったのです。それまでは物をそっくりに写し取る事が出来たり、上手に描ければ良いと思っていました。自分はそれを比較的上手に出来た方でした。しかし先生からは、『空間がない』だの『物を面で見ろ』だの『もっと色を感じろ』など、色々言ってきます。空間?物を面で見る?見えない色を感じろ?全く分からない事だらけでした。

 絵を描くのに、そんな見方、考え方があるという事が衝撃でした。それまでの考え方を180度変えられた様な気がしました。それくらい衝撃的な出会いでした。
 そしてそれが『楽しく』思えたのです。なぜなら知っていると思っていたはずの世界の事を全く知らなかった事に気づき、知らない世界の事をこれから知って行ける様な気がしたからです。そう考えると美術というものが、それまで以上に『自由』なんだと思えて本当に『好き』になりました。そっくりに描く事だけではなく、目の前にある物の中に何が潜んでいるか、探って行く。そして何が発見できるか?その行為自体が美術なんじゃないか?と思うようになりました。

 予備校では物を面でみたり、空間の表現方法を学んだり、色彩の事を学ぶ事で、受験実技で必要な基礎実技力を身につけて行きますが、それを繰り返し訓練して行く中で、本当に欲する物に自分自身で気づいて行く事が大切なんじゃないだろうか?その経験が出来るのが予備校ではないだろうかと思います。

 だから僕は、単なる受験勉強としてではなく美術を本当の意味で好きになってもらいたいと思いながら、指導しているつもりです。本当に好きならば何かを得ようと自らの意思でもがき、いつか必ず掴む事が出来るからです。僕のやっている指導とは、そこにほんのわずか潤滑油のようなものをたらし込んで後押しをしてあげているに過ぎないと思っています。
好きであるからこそ逃れられない辛さも経験しながら、何かに気づいたり発見したりする実感があると、その人は受験に合格しますから。

長々と読んで頂いてありがとうございました。

次は、教え子でもある首里高校染織科の平安名久美子先生にバトンタッチします。平安名先生よろしくお願いします。

2011年12月13日火曜日

「いろんな場所で生まれる美術」詳細決定!




いよいよ面白いことになってきました!
ワークショップ!公開授業!展示!ワークショップ!シンポジウム!
何が飛び出るか、予定あけておいて下さいよー!